• 機関紙

Palnote vol-86 2023年9月3回号掲載【特集】❝ハッピーストック❞で非常時も安心!
食品ロスZEROの備え方

非常時への何らかの「備え」をしている方は多いと思いますが、「それは実際の災害のレベルに見合った備えですか?」と問いかけると、「足りなかった」ということも少なくありません。まずは自分の生活している環境にどのようなリスクがあるのかをハザードマップを利用して確認してみましょう。水害の心配がないのであれば、家の耐震構造的に在宅避難が可能かな…など、少し非常時の状況が想像できるのではないでしょうか。
今回は、在宅避難時に役立つ「家庭内流通備蓄」について危機管理アドバイザーの国崎信江さんにお話を伺いました。

  • 株式会社危機管理教育研究所 代表 危機管理アドバイザー

    国崎信江さん

「家庭内備蓄」とは?

簡単に言うと、「普段家にあるものを災害時にも無駄なく使おう」という考え方です。普段から食べているものを少し多めに用意しておいて、食べた分だけ新たに補充して常に一定量あるようにしておけば、災害時にもその一定量の食材が確保されていることになります。

しかしこれは、普段多くの家庭でやっていること。実際に冷蔵庫の中を野菜室から冷蔵室・冷凍室に入っているものも全部食べつくしたら何日分になるか考えてみてください。おそらく3日分くらいはあるのではないでしょうか。さらに、常温保存のお米やパスタ、レトルト食品などを足したら…?10日分くらいの食料は、実はいつも家に備蓄されているのです。

「非常食」の考え方を変えよう!

割と多くの人が勘違いしているのですが、必ずしも「非常時に非常食を食べる」必要はないのです。たとえ電源が落ちたとしても、冷蔵庫の中は一定時間冷気が保たれていますから、いかに中身を早く・無駄なく消費するかをまず考えます。腐りやすいものを先に消費して、常温品は後からでも大丈夫。これは、いつものくらしの中でも考えていることだと思います。

かといっていつもたくさん食品を買い込んだり、「非常食を人数分揃えよう」と頑張っても、結局何事も起こらず期限切れになって処分…を繰り返すのはまさに食品ロス。普段から、自分の家にどのくらいの食材があるのかをきちんと把握しておくことが重要です。

「ハッピーストック」で家族もHAPPY

食べ物が「非常食」でなくて良いのと同じように、飲み物も「水」である必要はないと考えます。普段使わない水が何箱も家の中にあると邪魔で場所を取るし、掃除のときは移動が大変だし…であれば、家族の好きな飲料をそれぞれ箱買いしておけば、いつでも各自好きな飲み物が飲めて、しかもそれがストックになるし、何より無理なく続けられる。好きで食べたり飲んだりしているものが普段からたくさんあるのは幸せなことですよね。「災害用」と意識せず、「好きだから箱買い!」なら、ハッピーな気分で備蓄できていることになります。

あると安心な品目をチェック!

考え方

基本的にはいつも食べているものですが、パックのごはんは、災害時にはあった方が便利。手をかけた料理はできないと想定されるので、「そのまま食べられる」「ボイルするだけ」などの調理済みの食材があると安心です。

(一例)普段からよく利用する食材をリストアップ!

パックのごはん/ロングライフパン/冷凍野菜/豆腐/野菜スープ/チーズ/焼きおにぎり/シリアル/冷凍ウインナー/茶碗蒸し/冷凍しらす/じゃがいもサラダ/野菜ジュース/果物類 など

上記にプラスして

  • 離乳食にはブレンダー(ミキサー)が役立ちますが、電気の供給元としてポータブル電源があると便利。

  • ろうそくなどの明かりは暗くて見づらいことがあるので、特に高齢には明るめのランタンが必須。水塩で発電できるタイプもあります。

  • ペットがいる場合、避難所にはなかなか行きづらいケースも多いので、シーツやフードは常にストックを。

国崎さんより 一言アドバイス

以前、「賞味期限が来る前に‥」と、ストックしていた備蓄食材ばかり食べていたら体調を崩してしまったことがありました。災害時にこそ、食べ慣れた普段通りの、栄養バランスのとれた食事をしっかりとることが大切なのだ、と改めて感じた出来事でした。備蓄食材ばかり増やして賞味期限切れにしてしまうのではなく、ぜひ一度自分の家にある食材を確認して、普段から「これで10日間乗りきれる」というようなラインナップにしてみてください。

そして一度で終わってしまわないよう、無理なく続けることこそが何よりも大切です。

国崎さんもおすすめ!❝日常使いもOK❞な防災アイテム

 

  • ソーラーランタン
    太陽光で蓄電し、暗くなったら光るタイプのランタン。普段は防犯やインテリアで庭などに置いておき、非常時にはランタンの代わりになります。

  • ヘッドライト
    懐中電灯があるからいいや …と思っていると、意外に手元が見づらく使えないことも。頭に装着するタイプのライトがあると、両手が空くので暗い中でも格段に作業がしやすくなります。

  • ベランダ菜園
    ちょっとした家庭菜園でも、非常時には貴重な野菜がとれるので重宝します。いろいろ収穫できれば普段の食卓の彩りにも。

  • ポータブル電源+ソーラーパネル
    太陽光で充電できるポータブル電源は、日常使いやキャンプにも大活躍。 ちょっとした家電なら充分まかなえるので、電気代の節約にも。

実際にやってみました!3時間限定「おうちDEキャンプ」

「おうちDE キャンプ」とは、家庭内の水道・電気やガスが使えなくなったと想定して、3~4時間過ごしてみましょうというものです。これをすることで、非常時にどんなふうに考え・行動すれば良いかを身をもって体験できる…ということなので、職員が実際にやってみることにしました。

\やってみて気づいたこと/

職員宅の卓上調理器は電気タイプ、なおかつポータブル電源もないので、電気とガスが止まると食事は冷たいものを食べるしかない・・・ということに。なんとなく「停電しても数時間のうちに復旧するのでは」と思っていたのですが、復旧に時間がかかれば、毎日冷たい食事ばかりで余計に気分が落ち込んでしまいそうです。また、懐中電灯が一つしかなく、誰かが使用中はリビングの明かりはスマホ液晶の明かりのみに。ヘッドライトやポータブル電源の必要性をひしひしと感じました。

  • 何か作業をしようと思っても、誰かに手元を照らしてもらわないと何もできない。

  • ポータブルトイレ、中身を初めて出してみた。暗い中で懐中電灯を頼りに使うのは大変!

  • 非常袋に入っていた大量の食材。電気もガスもないと食べられないものが多い。

  • 結局夕食のおかずとして食べたのはこれ。冷たいままでした。