Palnote vol-158 2025年3月3回号掲載【特集】ひたむきに、前向きに。
「顔の見える関係」で良い野菜を届けたい
from サンドファーム旭
極端な気候変動や物価高騰。昨今の日本の状況は、農業にも大きな影響を与えています。
パルシステムは産直産地とともに、化学合成農薬・化学肥料の使用量削減や有機農業の推進、持続可能な環境保全型農業に取り組んできました。しかし、気温上昇にともなう病虫害の増加や資材費高騰、生産者の高齢化や担い手の減少など、農業を取り巻く状況は厳しさを増し、いかにして環境保全型農業を続けていくかが問われています。
今回は県内の産直産地より、親世代からの農業を受け継ぎ、農家同士の情報交換などもしながら試行錯誤を重ね、環境保全型農業に前向きに取り組む「サンドファーム旭(旭市)」代表の金谷雅幸さんに、産地の現状や取り組みについてお話を伺います。

サンドファーム旭ってこんなところ
千葉県北東部の旭市において、パルシステムの産直産地の一員として前身組織の時代から38年以上にわたる関係を築いています。土壌が砂土であることから「サンドファーム旭」と名付けられ、砂地を生かしたハウス栽培でミニトマト・きゅうりなどを中心に生産しています。
金谷さんは組織の代表を務めながら、「パルシステム生産者・消費者協議会」の生産者幹事としても活動。全国各地の生産者とも交流をもっています。

「やりがいのある農業」とは
「農業を楽しむ。苦しい農業からやりがいのある農業へ」という理念を掲げるサンドファーム旭。自身も親から農業を引き継いだ金谷さんはこう話します。
「やっぱり、やらされ感でやる仕事って面白くないじゃないですか。せっかくやるんだったら、自発的に自分の意志でやりたいな、と思うんです。それに、農業って絶対に一人じゃできない。仲間を作って、皆で情報共有しながら、良いものは取り入れて柔軟にやっていきたいですよね」
パルシステムの産直産地では、近場の生産者同士が手を結び、「近郊産地」という単位で支え合い、組合員の注文に応えています。そのなかで、同じ作物を作っている生産者は「部会」という組織を作り、知識や経験を共有しながらより高いレベルの農業をめざしています。

「例えばトマトの部会で研修会をやると、研修の後はちょっとお酒を飲んで皆と話して…っていうのが楽しくて。でも最近の若い人たちってすごいんですよ。もう、トマトの話しかしない(笑)。新しい技術のこととか、データを取ってあれこれ試してこうだった…って、ずーっとトマトについて熱く語り合ってるんです。もう、“トマトオタク”ですよ。でも、そのくらいの熱量で農業に取り組めるって幸せですよね」
と話しながら、やさしい目で野菜を見つめる金谷さん。野菜への深い愛情が伝わってきます。
環境にやさしい農業をめざして
土壌還元消毒

土の中に微生物を大量に投入して発酵させ、土の中を無酸素状態にすることで悪い菌などを死滅させる手法。化学性の土壌消毒に比べると手間も時間もかかりますが、土にはとてもやさしい自然由来の消毒方法です。
虫で虫を駆除?!

薬剤を使わず害虫を駆除するために、“ほかの虫”を放つという手法も使っています。例えば、トマトに害をなす「コナジラミ」には、天敵である「ツヤコバチ」を使い駆除。ただ、特定の虫にしか効果はないので投入のタイミングが非常に難しいそう。
国産クロマルハナバチの導入

受粉時に、植物ホルモン剤や主流である外来種の「セイヨウオオマルハナバチ」を使うことが一般的ですが、外来種は、ハウスから逃げ出した場合に環境に悪影響を与えることも。日本固有の種である「クロマルハナバチ」を使用することで、そうした心配を減らしています。現在はトマトの圃場にて「クロマルハナバチ」が活発に活動する4月~7月に使用しています。
めざせ!“千産千消”
ハウス栽培の野菜以外にも、「飼料用米」の生産にも力を入れているサンドファーム旭。およそ10haの田んぼで育てた米は、近隣の養豚場などに出荷し、その米を食べた豚が排出したものから作られた堆肥を田んぼに還元しています。
この飼料用米の出荷先には11月3回の『Palnote』で特集した『パルシステム千葉のこめ豚』を生産する北見畜産も。同じ千葉県の生産者同士で支え合って農畜連携を実現しています。

パルシステム独自の基準
「コア・フード」と「エコ・チャレンジ」
農薬削減プログラム」の取り組みのなかで生まれたのが、「コア・フード」と「エコ・チャレンジ」です。
「コア・フード」は、日本農林規格(JAS)に定められた有機農産物。「エコ・チャレンジ」は、化学合成農薬、化学肥料を各都道府県で定められた慣行栽培基準の1/2以下に削減。加えて、パルシステムの「削減目標農薬」の不使用を原則とします。さらに青果は、除草剤、土壌くん蒸剤不使用です。
高温多湿で病害虫による被害が発生しやすい日本において、多くの生産者が非常に高いレベルの栽培に挑戦しています。

現在の課題、そして次世代の農業へ
「今、気候変動が大きすぎて、これまで当たり前にできていたことができなくなっているんです。例えば、昨年は秋のミニトマトがどうしても作れなくて。というのも、秋のトマトを収穫するためには夏に花をつけてもらわないといけない。でも、暑すぎて花が咲いてもしおれてしまい、実が付かないんです。夏野菜なのにね」
昨今の気候の変化は日本各地に深刻な影響を与えており、当然千葉県もその影響を免れません。これまでにいなかったような害虫やウイルス系の病気が出たりすることもあるそうです。
「パルシステムの『エコ・チャレンジ』って、普通に栽培するよりも基準が厳しいんです。当初はそれをめざして作っていても、気温の変化で、見たこともない虫や病気が出て…結果的に『エコ・チャレンジ』基準での栽培を断念というケースも結構ありますね」
生産者の高齢化や担い手不足で、手間ひまのかかる「コア・フード」や「エコ・チャレンジ」の栽培をやめる農家があるのは事実ですが、現状は「やりたくてもできない」ことが増えているのだそうです。

サンドファーム旭のハウス。手前に広がっているのは、 露地栽培のブロッコリー。
「それもあって、うちでは、なるべく気候に沿ったものを作っています。ハウスの中に暖房を入れて、化石燃料を使って温めて冬にトマトを作るんじゃなくて、冬は涼しい季節に適したレタスをメインにしよう、とかね」
そんな金谷さん、実は新しい取り組みにも貪欲にチャレンジしています。
「今、意欲のある若手たちといっしょに、暑すぎる夏にも安定して野菜を収穫できるような方法を模索しています。現状を嘆いてばかりではなく、なんとか打開する方法を見つける。これからの農業を担う次世代にも期待したいですね」
そう語る目は、未来をしっかり見据えています。
組合員交流への想い
家業の農業を継ぐまではパルシステムで配達員として働いていたこともある金谷さん。組合員への想いはひとしおです。
「当時配達区域だった方で、『金谷君のきゅうり届いたよ』と生産者カードに書いてくれる方が今もなおいらっしゃるんです。そういう方たちに、変なものをお届けできないでしょう。だから、いつも組合員の皆さんが喜んでくれる顔を思い浮かべながら作業してるんです。組合員交流では、本当に直に組合員の皆さんの顔が見えるから、こういう方たちの期待を裏切らないぞ、って生産意欲が増しますね」
『顔の見える関係』でお互いを理解し合う、それこそが“真の産直”だと語る金谷さん。だからこそ、サンドファーム旭では産直交流や学習会、パルシステムの職員研修なども積極的に受け入れています。これからもさまざまな機会があるので、興味があればぜひご参加を。

パルシステムの「産直4原則」
- 生産者・産地が明らかであること
- 生産方法や出荷基準が明らかで生産の履歴がわかること
- 環境保全型・資源循環型農業をめざしていること
- 生産者と組合員相互の交流ができること
パルシステムの「産直」は、単に安全・安心な食べ物を調達する手段ではありません。大切にしているのは、「作る人」と「食べる人」がともに理解し合い、利益もリスクも分かち合える関係を築くこと。そのため、生産者と組合員が交流できる場を積極的に設け、互いに意見や要望・感想などを伝え合うことができるようにしています。
2024年度 組合員交流のようす

10月14日に開催された収穫体験での1枚。「どれがおいしいかな?」「もう食べごろかな?」…選ぶ目も真剣です!
2月14日に職員研修を実

パルシステムの近隣産直産地の特徴や、化学肥料や農薬に頼らない生産の取り組みについて理解を深めることを目的に職員研修を開催しました。農作業の体験を通じて、日ごろ自分たちが取り扱っている商品を知り、さらに生産者との交流も実現しました。
2025年度(冬頃)には公開確認会も予定
「公開確認会」は、産直産地の農畜産物の栽培・生産方法や安全性への取り組みを、組合員が直接確認するパルシステム独自の取り組みです。2025年度はサンドファーム旭にて「ハウス野菜」の監査が予定されています。
\サンドファーム旭での交流会で大好評/
トマトときゅうりの混ぜごはん
●材料(1人分)
ごはん・・・・・・・・・・・・・1杯
ミニトマト・ ・・・・・・・・・3個
☆マヨネーズ・ ・・・・・・大さじ1
きゅうり・ ・・・・・・・・・・・1/2本
ツナフレーク・・・・・・・1/2缶
☆みそ・・・・・・・・・・・・・小さじ1/2
●作り方
- きゅうりは薄切りにして塩(分量外)ひとつまみで塩もみしておく。
- ミニトマトは8等分程度に切る。
- ツナは汁気を切り☆とよく混ぜ合わせ、軽くすすぎ水気を絞った1と2を加える。
- ごはんと混ぜ合わせ、お好みでいりごまを振ってでき上がり。
